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商品の形態等(東京地裁H27.11.11 平成26(ワ)25645)

 本件は、防災用キャリーバッグ(原告商品)を販売している原告が、被告に対し、主位的には,被告の販売に係る防災用キャリーバッグ(以下「被告商品」という。)が、原告商品の形態を模倣したものであり、被告商品の販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当する、予備的に原告商品の形態は、原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されている状態に至っているところ、被告商品の形態は、原告商品の形態と類似し、原告商品と混同を生じさせるから被告商品の販売は同項1号の不正競争行為に該当すると主張し、差止・損害賠償請求、商品の廃棄等を求めた事案である。

 主な争点は、不競法2条1項3号や1号の該当性であったが、3号については司実質的に同一と認めず、また1号については、商品等表示該当性を認められず、原告の請求は棄却された。

判示事項

3号の商品の形態の該当性

「そして,同号が「商品の形態」を法的に保護しようとする趣旨は,他人が資金,労力を投下して商品化した商品の形態を他に選択肢があるにもかかわらずことさら模倣した商品を,自らの商品として市場に提供し,その他人と競争する行為は,模倣者においては商品化のための資金,労力や投資のリスクを軽減することができる一方で,先行者である他人の市場における利益を減少させるものであり,事業者間の競争上不正な行為として位置付けるべきものとしたことにあると解されるから,同号によって保護される「商品の形態」とは,商品全体の形態をいい,必ずしも独創的なものであることを要しないが,他方で,商品全体の形態が同種の商品と比べて何の特徴もないありふれた形態である場合には,特段の資金や労力をかけることなく作り出すことができるものであるから,このようなありふれた形態は,そもそも,同号により保護される「(他人の)商品の形態」に該当しないと解すべきである。
また,同号は,「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態」について,同号による保護から除外される旨を規定しているが,その趣旨は,商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態を特定の者に独占させることは,商品の形態ではなく同一の機能及び効用を有するその種の商品そのものの独占を招来することとなり,事業者間の自由な競争を阻害することになりかねないことから,かかる形態を同号の「商品の形態」から除外したものと解される。 」

3号の実質的同一の該当性

「そして,「実質的に同一の形態」であるか否かは,当該商品の需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識できる,同種の商品の属する分野や同種の商品の形状の特徴との比較等を考慮して判断すべきである(・・・)。」

「以上のとおり,原告商品と被告商品の形態の共通点は,ありふれた形態であるか,防災用バッグの機能に不可欠な形態であるといえ,他方で,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識できる形状として,収納部分の大きさの差異や素材,縫製状態の点において顕著な差異がある以上,他の共通点をすべて組み合わせた点が共通するとしても,原告商品と被告商品の形態が実質的に同一であるとは,認められない。なお,本体内部の構造において,上記アの⑧の点のとおり,アルミ製の覆いをすることは,防災用バッグの機能として不可欠な形態であるとはいえず,ありふれた形態であるとも認められないとしても,外部の形状に顕著な差異がある以上,内部構造の一部において共通する上記の点を加えて商品全体としての形状を対比したとしても,実質的に同一であるとは認められない。」

1号の商品形態に関する商品等表示該当性

「そして,同号にいう「商品等表示」とは,「人の業務に係る氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」をいうところ,商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合がある。
このように商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し,同号にいう「商品等表示」に該当するためには,①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていることを要すると解するのが相当である(知財高裁平成24年(ネ)第10069号・平成24年12月26日判決参照)。」

コメント

 本件は、請求棄却となりましたが、色々と判断基準等が裁判所から示されているため取り上げました。

 まず、3号については、その制定趣旨から、「商品の形態」や「実質的同一」の文言を解釈しています。不競法の条文の解釈は、その趣旨やこれまでの沢山の裁判例の蓄積によって、およそ定まってきています。勿論、実務家としては規範だけでなく、その当てはめ部分の事実認定にも着目する必要があります。また、3号の原告商品の形態と被告商品の形態の実質的同一か否かの検討においては、裁判所は、共通点、差異点を認定した上で、それぞれの点が、ありふれた形態なのか、商品の機能を確保するために不可欠な形態なのか、について検討し、結果として、実質的同一を否定しています。この判断手法は、意匠権侵害訴訟における登録意匠とイ号意匠との類似か否かの判断と同じプロセスです。需要者を視点にして、公知となっている商品を踏まえながら、ありふれた形態なのか、不可欠な形態なのか、また、需要者がどこに着目するのかという点を踏まえて両形態を観察して、最終的に判断を下しています。また、商品の特性を需要者視点から考え、外部の形態に着目し、内部形態の一致についてはあまり重視されていません。

 次に商品形態に関する1号の適用ですが、これも知財高裁で示された規範がそのまま地裁でも述べられています。本来的には商品形態は3号の保護が及ぶべきものですが、3号には時期的制限等があり、3号を主張できない場合によく1号が主張されます。規範自体は、およそこれで固まっているのだと思います。1号はあくまで出所混同の防止の規定であり、商品形態自体を保護するものではありません。1号で保護が及ぶほどに商品形態に特徴があり、かつ、それ自体が出所表示機能を果たすべく周知性を要求するという趣旨です。商品形態に関して1号の適用のハードルは依然として高いです。

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