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図書券利用の商品等表示性(東京地裁H14.1.24 平成13年(ワ)11044号)

 全国共通図書券の発行、販売を行っている株式会社である原告が、被告がその店内において「図書券の利用が可能である」旨の提示をし、 同内容のチラシを商圏内に配布し、顧客の持参する全国共通図書券を図書との引換えをする行為は、不正競争行為に該当すると主張し、 被告に対し、差止、廃棄、損害賠償等を求めた事案である。「図書券の利用が可能である」旨の表示が原告の周知の「商品等表示」 (不正競争防止法2条1項1号)に当たるかという点が大きな争点となった。 また、図書券を利用した図書と引き換える行為(営業手法)が不正競争行為に該当するかも争われた。
 結果としては、「図書券の利用が可能である」旨の表示は周知商品等表示に該当するとして請求を一部認容し、図書券を利用して 図書と引き換える行為自体は付随的行為を認定したとしても不正競争行為ではないとして棄却。

判示事項

図書券の利用が可能である旨の表示の商品等表示性
「・・・遅くとも平成6年ころには一般消費者の間で,全国の多数の新刊図書を扱う書店において図書券を用いて図書を購入 することが可能であること及びこれらの書店は図書券による代金決済を可能とする組織の加盟店であることが,広く認識されていたものと認めることができる。」
「そして,前記認定のとおり,新聞広告,雑誌広告やテレビコマーシャルにおいて,原告加盟店において図書券の利用が可能である旨の 表示がされ,また,原告加盟店の各店舗においても当該店舗において図書券の利用が可能である旨を表示したポスターなどが掲示されて いたことを併せ考慮すれば,「図書券の利用が可能である」旨の表示は,遅くとも平成6年ころには原告加盟店を示す表示として一 般消費者の間に広く認識されていたものというべきである。」
「すなわち,特定の種類の商品券,プリペイドカードやクレジットカードを利用しての商品の購入が,当該商品券等の代金決済 システムを行う特定の組織に加盟する店舗においてのみ可能であるような場合には,ある店舗において当該商品券等の利用が可 能であることを表示することは当該店舗が当該組織の加盟店であることを顧客に示すものであり,このような場合には ,当該商品券等の利用が可能である旨を表示することが,特定の組織に属する店舗の営業であることの表示となるものである。 この場合には,そのような特定の商品券等による代金決済を行う組織の加盟店であることが,当該店舗の社会的な信用を高 めることも少なくないのであって,このような点を考慮すれば,当該商品券等の利用が特定の組織に属する店舗のみにおいて可 能であることが需要者の間に広く認識されている場合には,当該商品券等の利用が可能である旨の表示が不正競争防止法2条 1項1号にいう周知の「商品等表示」に該当し得るものというべきである。」

「本件においては,前記認定のとおり,「図書券」は,原告,指定取次会社及び書店(加盟+B15店)の三者を契約当事者とする 本件加盟店契約に定められた方法により決済される図書のみを対象とする商品券であって,この決済システムにより図書 券を換金することができるのは原告加盟店のみであり,かつ,図書券が原告加盟店において利用可能であることが一般消費者 の間で広く認識されていたのであるから,「図書券の利用が可能である」旨の本件表示は,不正競争防止法2条1項1号に いう周知の「商品等表示」に該当するものと解するのが相当である。」


図書券を利用した図書販売方法自体の保護の可能性
「また,図書券と図書とを引き換えること自体は,代物弁済として行い得る行為であり,需要者に対して何らかの表示をして いるものともいえないから,それ自体は不正競争行為に該当するものではない。代金を図書券で受領した場合にその旨をレシート に記載することも,単なる弁済方法に関する事実の記載であり,需要者に対する表示ということができないから,不正競争行 為に該当しない」

コメント

 普通に考えれば、図書券の利用が可能である旨の表示自体を商品等表示として捉えるのはなかなか難しい。しかしながら、 条文の商品等表示はあくまで例示であり、自他商品識別標識、出所識別標識として機能し得るものである限り、商品等表示に該当し得る。 商品形態の場合には、商品等表示性と周知性が一緒に評価されることが多いが、本件でもこれと同様に商品等表示性と周知性を切り離さず 評価されている。
 本件では、代金決済システムのサービス自体を保護しているようにも捉えられるが、あくまで2条1項1号で保護されるのは表示である。 したがって、図書券を利用して図書を販売する行為自体は許されるのであり、それを表示をもって宣伝することが違法になると述べているのである。 もっとも、実際、図書券の利用が可能である旨の表示をしないと、図書券を利用して図書を購入する者が減ると思われるから、間接的には、 図書券利用サービス自体を保護しているのではないかと考えられる。