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虚偽事実の告知(東京地裁H27.2.18 平成25年(ワ)21383号)

 本件は,原告が,被告に対し,本件告知が不正競争防止法2条1項14号の虚偽の事実の告知又は独禁法19条の不公正な取引方法に該当すると 主張して,不競法3条1項又は独禁法24条に基づき,告知・流布行為の差止及び損害賠償を求めたもの。
 特に、FRAND宣言している特許権者が、FRAND条件によるライセンスを受ける意思のある者やその小売店に対して権利行使す ることが権利の濫用にあたる場合に、小売店に対して差止請求権があるかのような告知をする行為が虚偽事実の告知に該当するかが 問題となった。また、過失の有無についても問題となった。 結論としては、 虚偽事実の告知に該当するとし差止を認容しつつ、損害賠償請求については過失なしとして棄却された。

判示事項

虚偽事実の告知にあたるか
「以上を総合すれば,FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方において, 特許権者が本件FRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であることの 主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解される(以上につき,知財高裁平成26年5月16日 決定・判時2224号89頁[乙21大合議決定]。」
・・・
「オ 上記のとおり,本件告知の時点では,原告はFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有していたと認められるから, 被告提示実施料がFRAND条件に違反するものであったか否かにかかわらず,被告プール特許権者が原告やその顧客である小売店 に対し差止請求権を行使することは,権利の濫用として許されない状況にあったと認められる。
 そして,上記のように,差止請求権の行使が権利の濫用として許されない場合に,差止請求権があるかのように告知することは, 「虚偽の事実」を告知したものというべきである。
 このように解することは,平成16年法律第120号により特許法104条の3が追加される前は,無効事由を有する特許権の行使は 権利の濫用とされていたところ(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁[キルビー事件] , そのような特許権に基づく特許)権侵害警告は「虚偽の事実」の告知と解されていたこと(東京地裁平成16年3月31日判決・ 判時1860号119頁等参照)とも整合する。」


違法性阻却の有無
「違法性阻却事由の有無について被告は,形式的に不正競争に該当するとしても,本件告知は正当な権利行使に該当し, 違法性が阻却されると主張する。
 思うに,特許権等の行使と認められる行為に不競法を適用しないとする同法旧6条を削除した平成5年法律第47号による改正の前 後を問わず,特許権の正当な行使と認められる行為については,不正競争は成立せず,他方,特許権の濫用と認められる行為については, 不正競争の成立を妨げないものと解される。そして,無効事由のある特許権の行使や,FRAND宣言に違反するような特許権の行使は ,権利行使の場面においては権利の濫用と認められるのであるから,不正競争の成否の場面においても,同様の基準の下で権利の濫用 と認め,不正競争の成立を妨げないものと解するのが相当であり,告知に至る経緯において権利者を保護すべき事情については, 差止めの必要性や故意過失の判断に際して考慮すれば足りるというべきである。」


過失の有無
「当裁判所は,被告には本件告知が不競法3条1項14号の虚偽の事実の告知に該当する旨の認識があったとは認められず,そのことにつき 被告に過失があったとはいえないから,原告に同法4条に基づく損害賠償請求権は発生しないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
・・・FRAND宣言をしている特許権者による差止請求権の行使については,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思 を有する場合に権利濫用とする(乙21大合議決定や本判決の採用する)法的構成以外にも様々な法的構成が考えられるところであり, 本件告知の時点において,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有するということをもって,直ちに差止請 求権の行使が許されないと解することが,確立した法的見解であったということはできないのであるから,被告は,被告プール特 許権者の小売店に対する差止請求権の行使が権利濫用として制限され,本件告知が虚偽の事実の告知となることを,本件告知の時 点では知らなかったものであり,そのことにつき過失もなかったと認めるのが相当である。」

コメント

 FRAND宣言に関連するものであり、FRAND宣言している特許権者の権利行使が権利濫用となる場合には、虚偽事実の告知に該当すると の判断を示したのは妥当な判断だと思われる。但し、損害賠償において、確立した法的見解がなかったことを理由に過失を否定している 点はやや疑問が残る。また、違法性阻却については、結局のところ、差止の必要性や過失の点で判断すればよいとし違法性阻却を認めなかった。 違法性阻却されることは今後永遠にないのかもしれない。