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虚偽事実の告知(大阪地裁H27.2.19 平成26年(ワ)3119号)

 本件は、被告によるプレスリリースの掲載が不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当し,先行訴訟の提起等が不法行為を構成 するとして,同法4条及び民法709条に基づいて損害賠償請求をした事案。
 結論としては、プレスリリース中の一部表現については虚偽事実に該当するとして、プレスリリースした行為は虚偽事実の告知に該当し 違法性も阻却しないとし請求の一部を認容した。なお、先行訴訟の提起は不法行為には該当しないとして棄却された。

判示事項

虚偽事実の告知に関する故意過失
「(3)故意・過失の有無
ア プレスリリースにおける注意義務 特許権侵害を理由に提訴した際,提訴の事実を公表するにとどまらず, (1)前記において検討したように,他者の行為が,自己の有する特許権を侵害しているとの内容をウェブサイト上に掲載してプレスリリース を行った場合,不特定多数の者が当該プレスリリースを読むため,他者の営業に重大な損害を与えることが容易に予想される。
したがって,そのようなプレスリリースを行うに当たっては,あらかじめ,他者の実施行為等について,事実の調査を尽くし,特許権侵 害の有無を法的な観点から検討し,侵害しているとの確証を得た上で,プレスリリースを行うべき注意義務がある。 そして,このような注意義務を怠った場合,損害賠償責任(不正競争防止法4条)を負うというべきである。
イ 本件プレスリリースにおける被告の注意義務 証拠(乙12の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,被告が, 先行訴訟提起前に,本件製品を実際に入手した上で,本件製品及び本件製品に使用されているLEDチップの構造,構成材料を分析したことが認められ ,あらかじめ,構成要件充足性を検討したと考えられる。また,原告のウェブサイトに,原告が取り扱う半導体製品のメーカーのひとつとしてエバ ーライト社が掲げられ,同社の白色LED製品を取り扱っているかのように読める記載があり,同社のトップページへのリンクが貼られ,同社の ウェブサイトにおいて本件製品が掲載されていた。そのため,被告は, 先行訴訟を提起するに当たって,原告のウェブサイトの記載や取引関係 を根拠として原告が本件製品の輸入,譲渡又は譲渡の申出をしていると判断したと考えられる。
 しかしながら,前記(2)のとおり,それだけでは,そのような判断をするための根拠としては不十分というべきである。 被告が,原告に問い合わせる,原告に警告書を送付して回答内容を確認する,原告の取引関係者等の第三者に問い合わせるなどして, 原告が取り扱う具体的な製品を特定するための調査を尽くしたような形跡は窺われない。被告が主張するように,海外から輸 入される白色LED製品を市場で入手するのが困難であったり,流通経路や国内の輸入元,販売元が不明であることが多かったりしたとしても, 上記認定を左右するものではない。」


先行訴訟の提起が不法行為となるか
「先行訴訟は,被告が,原告が本件製品の輸入,譲渡又は譲渡の申出をしており,これが本件特許権を侵害すると主張して, 原告に対し侵害行為の差止め等を求めたものである。
 特許権者が,競業者等を相手方として,その行為が特許権を侵害するとして,特許権侵害訴訟を提起することは, 特許権や裁判を受ける権利(憲法32条)の行使である。先行訴訟の提起が,相手方に対する違法な行為といえるためには, 「当該訴訟において,提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであるうえ,提訴者がそのことを知りながら又は 通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして 著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である」最高裁第三小法廷昭和63年1月26日判決 民集42巻1号1頁参照) 。」

コメント

 特許権侵害の事実がないにも関わらず、侵害している旨を告知すれば虚偽事実の告知に該当し、2条1項14号の不正競争行為となる。 この際、故意や過失また違法性阻却の有無が問題となるケースがあるが、通常は、事実調査、法的観点での検討すべき注意義務があるため、 過失は認められることがほとんどである。本件でも、構成要件該当性やHPの確認程度ではダメだと述べられている。なお、FRAND宣言に関連して 虚偽事実の告知が、過失なしと判断された事例が最近出たのと対比される。
 また、先行訴訟の提起については、従前の最高裁判例のとおり、訴訟提起が違法となるのは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして 著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものとの規範に基づいて本件ではそのような事情はないとされた。