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正露丸事件(不正競争防止法)

 ラッパのマークでおなじみの「正露丸」を製造販売する大幸薬品が、同種商品を販売するキョクトウ薬品に対して、パッケージ使用の差 し止めなどを求めた裁判。最高裁まで争われ、大幸薬品の上告受理申立てを受理しない決定をし、大幸薬品の請求を棄却した2審判決が確定した。 この事件について弁護士ドットコムに投稿しておりますが、かなり省略されていますので、もともとの記載内容をここで紹介しておきます。
 この裁判では、両表示が似ているか否かの判断が争われたのは勿論ですが、実は、その前提となる比較対象を特定するところから争いとなりました。 両パッケージの写真は、裁判所のHPの一審判決別紙を参照ください。

比較の対象は表示の全部か?

 不正競争防止法2条1項1号や2号に基づく請求の場合、原告(控訴人)であった大幸薬品の商品表示が需要者取引者によく知られていること (周知著名)が必要となります。この点について裁判所は、「セイロガン糖衣A」の一体化した文字やロゴは、大幸薬品が長年に亘り使用し てきたことから同社を表示するものとしてよく知られるようになっていると認定しました。もっとも、パッケージ全体については未だ周知著名 な表示とまではいえないと判断しました。そのため比較の対象となる大幸薬品の表示は、あくまで「セイロガン糖衣A」の文字やロゴ部分 (金色のAの部分も含む。)ということになり、パッケージの背景色や「飲みやすい白い錠剤」「84錠」等の表示、ラッパのマーク等は、 似ているか否かの判断要素から外されました。
 他方、キョクトウの表示については、パッケージに「正露丸」「糖衣」「S」の表記がそれぞれ目立つように大きくバランスよく 配置されていること等から、これらが一体化された「正露丸糖衣S」の表示部分が比較の対象になるとされました。 なお、背景色はこの種の商品では競業他社の間でも普通に用いられているものであり、他の表示(「飲みやすい白い錠剤」、「90錠」)も 商品の特徴等を普通に記載したものに過ぎないとして、これらの部分は比較の対象とはなりませんでした。
 このように裁判所はパッケージ全体が比較の対象となると認定したのではなく、あくまで大幸薬品の「セイロガン糖衣A」の表示とキョク トウの「正露丸糖衣S」の表示部分がメインの比較の対象であるとしました。

両表示は似ているか

 両表示が似ているか否かの判断(類否判断)は、商品の取引の実情を考慮しながら、外観(見た目)、称呼(呼び方)、観念(イメージ)を 比較して相紛らわしいものか否かを検討し、それらを総合考慮し最終的に似ているか否かが判断されます。
 この点、裁判所は、両表示は最後の一文字の「A」と「S」の読み方が違うだけでその他の読み方は同じであり、また、両表示とも 糖衣錠タイプの家庭用胃腸薬「正露丸」というイメージを生じさせるとして称呼や観念は近いと判断した。しかし、今回の対象商品は、 商品が陳列されている薬局等で買い求められる一般医薬品である等の点を考慮すれば、称呼をあまり重視すべきではないとし、 両表示は、外観上、カタカナと漢字表記に明確な違いがあり、「A」と「S」もデザイン上大きく異なり、「正露丸(セイロガン)」や 「糖衣」部分の表記についても相違があると述べました。そして、この外観上の違いを重視し、両表示が全体として似ていないと判断し、 大幸薬品の請求は棄却されました。
 確かに表示全体を見ると背景色が同様であり、「飲みやすい白い錠剤」、「正露丸(セイロガン)」や「糖衣」という表示が双 方共通し、「A」と「S」しか違いがないため、一見すると似ているのではないかという風に思えるかもしれません。
 しかし、表示の類否判断においては、前述の判決内容からわかるように商品の取引の実情がかなり考慮されます。本件でも、 「正露丸(セイロガン)」や「糖衣」が普通名称であり誰でも使用できる用語であることや、パッケージの背景色等や他の表示部分も普 通に使用されている現状があること、対象商品は薬局等で買い求められる一般医薬品であること、シリーズ商品を発売する場合、 統一的なデザインが用いられる実情等があること(本件ではAとSのデザイン、「正露丸(セイロガン)糖衣」部分のデザインも違う)等 の取引の実情を比較対象の特定や類比判断の場面においてそれぞれ考慮した上で最終的な結論が導かれています。
 裁判所は単に見た目だけで判断しているのではなく、色々な事情を踏まえて、緻密に認定判断しているということがこれでお分かりいただけたかと思います。

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